平面バッフルの部屋

平面バッフルとフルレンジスピーカーが大好き。いい音めざして試行錯誤。

Western Electric 755A:フルレンジレビュー

レジェンドにして、いまでも世界最高クラスのフルレンジスピーカー

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Western Electric 755A

ウェスタンエレクトリック 755A」、このスピーカーユニットの背景については多くを語る必要はないのだろう。すでに諸兄が、その歴史や特長を諸所で語っておられる(ご存じない方は「Western Electric 755A」で検索)。私はそれらのレビューや評判を見聞きし、一度は聴いてみたいと願っていた。しかし、その価格は常人の感覚ではおいそれと買えるような値段ではなかった。そこまでは無理、と夢の中だけで止めていた。

そんな私がこのユニットを手に入れるに至ったのは、癌という病気にかかったからだった。時間を大事にしようと思ったとき、オークションで指が動いていたw。そんなユニットなので、実際にテスト・視聴したことを報告したい。

スペック

スペックは以下の通り。

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(ネットからの情報と実物からの情報で私が作成したものだが、発売年はちょっと怪しい。正確な発売年をご存じの方は教えていただければありがたい)

 外観

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浅型のコーン紙に、大き目のセンターキャップ、2本のコルゲーション(同心円状の凹凸)に特徴がある顔。この顔は、その後Altecになっても継承されている。

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アルニコマグネット、強固なフレームで安定感がある。茶色の部分は布のようなもので通気性がある。

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これはコーン紙の拡大写真だが、全面にディンプル(くぼみ)が施されているのがわかる。ディンプルは空気の整流効果やねじれ力を防止し歪を抑制する効果があるそうだが、2本のコルゲーションと共に歪の防止に役立っているのだろう。

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エッジはコーン紙をそのまま延長したフィクスドエッジだ。製造後70年以上経っているだろうに、穴1つない。

F特

視聴は以下の竹平面バッフルで行った。一番下が755Aだが、上のスーパーツィターとスーパーウーハーは鳴らさず、純粋に755Aフルレンジ一発だ。

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視聴感の前にF特を紹介しておこう。以下は、竹平面バッフルに装着した状態で、軸上1mで収音した結果だ。

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WE 755A F特(軸上1m、WaveSpectraにて)

きれない特性だと思う。100Hzから8KHzくらいまで概ね平坦で、それより先は上も下もなだらかに落ちていっている。1KHzあたりに少しピークがあるが、これが音の個性になっているようだ。

視聴感想

一言で言えといわれれば、明瞭。いろいろ言ってよければ・・・、音がクリアー、明かるく前に出る、情報量が多い、音に芯がある、バランスが抜群、人の声がリアル、中域から低音にかけての音に色気を感じる。周波数帯域はF特の通り広くはないが、低音も高音もちゃんと出ている。特に低音の音質は平面バッフル方式と相まって、どのユニットよりも魅力的。ドラムやコントラバスの音など、ずっと聴いていたくなる。
強いて弱点を言うなら、低音の量感がさらにあればいいことと、音量を限界近くまで上げていった際に、少し歪が出始めることくらいだろうか。
これが70年以上前に作られたものとは・・・。信じられないが、外観も古びてないし、それ以上に音は現代でも世界最高クラスのクオリティーだ。

このユニットを手に入れて本当によかったと思う、と同時に、これまでのスピーカー開発の歴史とは何だったんだろう、と思ってしまう。少なくても言えることは、ダイナミックスピーカーは70年前におおかた完成していたということだ。(fin)